日本の人工林と間伐

日本国土の森林率は国土の約6~7割。
約半分は、人の手によってスギ・ヒノキなどを植樹した人工林

そのうち未整備状態つまり放置されている人工林は、およそ半分とか1200万haとかそれ以上とか、言われています。
そしてそれは、日本中にあります。

戦後から高度成長期にかけて、天然の森林を伐採した跡などに、スギやヒノキ等が植樹されました。

太平洋戦争やそれまでに木を伐り出されたハゲ山に、戦後の復興の為に植林された復興造林。さらに建築材としての将来的な経済価値を見込んでの、政府によって奨励された政策である拡大造林です。

そんな人工林は、下草刈り・間伐・枝打ちなど、人の手をかける育成を必要とします。

ちなみに、
」とは、自然に生まれた木々
」とは、人工的に植えられた木々
のことなので、”人工林”という単語は、少しへんなカンジもしますが・・・。

1970年代後半~80年代に木材の輸入制限が緩和され、海外からの輸入量が急増します。
すると一転して木材価格は暴落し、林業に関わる人や手入れを続ける人が減り、日本の山には採算の取れない人工林の多くが、取り残されることとなりました。

適切な手入れがなされないと、林の地面(林床)に日光が届きません。
満員電車内のような環境で、お互いに太れずにひしめき合っています。
光を求めて高さだけが伸びるので、ヒョロヒョロとして、上の方にしか葉っぱが無い状態です。
植林の方法などの影響もあり、根っこを深く伸ばすことが出来ません。

針葉樹だけの林では、生命体同士の循環がほぼ止まってしまうために、土地がみるみる痩せ、ほとんど砂と砂利になっているような場所もあります。

そんな人工林は、線香林などとも呼ばれ、自分の高さを支えきれずに倒れる風倒木が近年増えてきています。
この数年で、さらに大規模な風倒木が起こると考えられます。

2018年台風21号の時の風倒木
(大阪府高槻市の民有人工林)

山の森の木々は、
樹幹や落ち葉で地面に落ちる雨を分散し、
根で山の岩や土を支えながら
ゆっくりと雨水を透過させることで、
洪水や土砂災害による山の崩壊をも抑えてくれていました。

・背の高い木だけではなく中層の木々や下草などで、
複合的多様な構成であること
・地面の中はしっかりと深い層にまで届く太い根が張り巡らされ、
さらに中層にも細かく木の根が張っていること
・表層の土が流れない様に、広葉落葉樹の落ち葉が重なり、
下草腐葉土なども在ること 

など・・・

総合的な要素が必要なので、
限定された針葉樹だけを人の手で植えられた山は、
土砂災害の危険がとても高くなります。

それを防ぐには、循環が滞り痩せて弱りゆく一方の放置人工林に
まず光を入れる為に、間伐(畑でいう間引き)をすることが有効です。

間伐は、
「多様化の中で循環する いきものの息吹が確かにある 強く健康な森」
への欠かせない第一歩です。

間伐などをせずに放置を続け、

土砂災害や地滑りが頻発すると、対策としてコンクリートで固められてしまう可能性が高まります。それは逆に、多少の大雨や長雨でも洪水が多発する原因になります。

そして、氣や水脈が閉ざされ、よどみ、腐敗していきます。山が腐ってしまうのです。

最悪の場合、 それを防ぐためだと称して、 ダムが建設されてしまいます。
いろいろご存じの方もおられるでしょうが、日本はコンクリートを使う工事が、異常に多い国です。

このままでは、日本の山は、あっちこっち灰色・・・という風景に変わってしまいます。そして、その中は腐敗している・・・

防げる災害を防ぎ、数年後の日本の風景を守り、豊かな森林の国に向かえるのか?は、わたしたちの選択にかかっています。

【林野庁:間伐とは?】 http://www.rinya.maff.go.jp/j/kanbatu/suisin/kanbatu.html